内積からなる行列が正則となる

前提

この記事を見るにあたっては、線形代数のベクトル空間や内積の知識が要求される。よって以下の記事を適当に参照すればいいだろう。

 

shakayami-math.hatenablog.com

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問題

{V}を有限次元ベクトル空間として、{\dim V=n}とする。このとき、{\langle ,\rangle:V\times V\to \mathbb{R}}という内積が存在して、さらに{\{v_1,\ldots,v_n\}}{V}の基底とする。このとき、行列{A}を、{(i,j)}成分が{\langle v_i,v_j\rangle}で表される実数値行列としたとき、{A}が正則であることを示せ。

*1

ヒントを下に書いたためこれを解こうと思った人はヒントを場合に応じて参照しつつ考えてみるといいだろう。

ヒント

{A}が正則でない場合、{Ax=0}となるような{x\in \mathbb{R}^n,x\neq 0}が存在する。そのような{x}に対して、{x^{T}Ax=0}となるが、そのような場合は果たして存在するだろうか?

解答

{x\in\mathbb{R}^n}で、{x^{T}Ax=0}となるようなものについて考える。

まずは{Ax}{i}番目の成分を{(Ax)_i}とでもしておくと、

$$(Ax)_i=\sum_{j=1}^{n}\langle v_i,v_j\rangle x_j$$

$$(Ax)_i=\langle v_i,\sum_{j=1}^{n}x_jv_j\rangle$$

 となる。よって、

$$x^{T}Ax=\sum_{i=1}^{n}x_i(Ax)_i$$

であるため、

$$x^{T}Ax=\sum_{i=1}^{n}x_i\langle v_i\sum_{j=1}^{n}x_jv_j\rangle$$

$$x^{T}Ax=\langle \sum_{i=1}^{n}x_iv_i,\sum_{j=1}^{n}x_jv_j\rangle$$

となる。ここで、{v}を、

$$v=\sum_{i=1}^{n}x_iv_i$$

とでもおくと、

$$x^{T}Ax=\langle v,v\rangle=\parallel v\parallel^2$$

となる。よって内積の正定値性から、

$$x^{T}Ax=0\Leftrightarrow v=0$$

でなくてはいけない。しかし{v_1,\ldots,v_n}{V}の基底であるため一次独立性が従うことから、

$$x_1=\cdots=x_n=0$$

でなくてはいけない。よって、{x^{T}Ax=0}となるような{x}は0ベクトルしかありえないことから、{A}正則行列であることがわかる。

*1:自分語りで申し訳ないが、これはブログの管理人がB1のときに実際に線形代数の授業の演習問題に出たものである。