写像で間違いがちなアレ
注意
この記事では証明をあまり詳しくやっていない。証明を詳しく知りたいという人は他のサイトを当たって欲しい。(ネットでなら大学が公開しているpdfを見るといいだろう)
問題
早速だが問題である。
という写像とという部分集合を持ってきた時、次のうち成り立たないものはなんだろうか?
一応説明しておくと,写像に集合を作用させているものは像,逆像と言って
$$f(A)=\{f(x)|x\in A\}(\subset Y)$$
$$f^{-1}(C)=\{x\in X|f(x)\in C\}(\subset X)$$
のように定義される。
解答
結論から言ってしまおう。答えは2である。(つまり、1,3,4は成り立つ。)
成り立たないということなので実際に反例を作ることができる。
とでもしておこう。このときを次のように定める。
このとき、より、となる。
しかしより、となるため、
となる。
反例の意味
ここで気になるのが、どのようにしてこの反例が作れるのかといったところだろう。
これは一言で言ってしまえば、
あるがあってを満たしており、且つすべてのについてであるときに反例が作れる。
と考えればよい。
このとき、であるため、を満たす。よってである。
しかしどのようなを取ってきても、とはならないので、である。
よって片方はが属しているが、もう片方はそうではないのでこの2つの集合は異なるということがわかる。
余談だがこの2つの集合に関しては包含関係は存在する。つまりは成立する。
逆像のほうが便利
ところで、順像のほうが定義がわかりやすいので、そうでない逆像は逆に敬遠しがちである。しかし今説明したように逆像のほうが”行儀の良い”性質を持っているので敬遠するべきではないだろう。例として位相空間の連続写像について説明する。
位相空間というのは要は「集合に対して開集合のリストを定めたもの」という考え方もできる。また開集合については、「開集合と開集合の積集合」が開集合であることや、「開集合と開集合の和集合」が開集合であるという制約条件がついている。*2
連続写像についての定義はいろいろあるが、ここでは以下を定義としよう。
を位相空間とする。が連続写像であるとは、「すべてのという開集合を取ってきた時、もの位相について開集合である」と定義される。
ここで、を開集合、を連続写像としよう。
連続写像の定義から、はそれぞれ開集合となるが、このときとなるが、は位相の定義よりこれもまた開集合となる。よって逆像として持っていった2つの集合の共通部分もまた開集合になることがわかる。がになったとしても同様で、このように逆像が行儀が良いことによってある程度助けられる。ちなみにこのような性質は、「連続写像であることを確認するためにはの準開基だけ見ればよい」という定理の証明にも生きてくる。
もし仮にこれが逆像でなかったとしたら?
例えば連続写像であることを「すべてのという開集合についてが開集合である」というような定義をしたらどうなるだろうか。という開集合については開集合となるが、の2つの(それぞれ異なる)集合が同時に開集合であることがわかる。このような定義だと開集合にしなくてはいけないものが多くなってまい格好が悪くなるし、先程の準開基についての証明もうまくすることができない。