開集合と閉集合

定義

集合$U\subset \mathbb{R}^n$が開集合であるとは、以下の性質が成り立つことである。

任意の$x\in U$に対して、ある$\varepsilon \gt 0$が存在して、$B(x,\varepsilon)\subset U$である。

ここで、$B(x,\varepsilon)=\{y\in\mathbb{R}^n;|y-x|\lt \varepsilon\}$

ノルムについては$|y-x|=\sqrt{\sum_{i=1}^{n}|x_i-y_i|^2}$という感じ

 

集合$V\subset \mathbb{R}^n$が閉集合であるとは、補集合$\mathbb{R}^n\setminus V$が開集合であることを言う。

開集合や閉集合の例

$n=1$のとき

区間$(a,b)$は開集合である。

区間$[a,b]$は閉集合である。

半開区間$[a,b),(a,b]$は開集合でも閉集合でもない

$(1,2)\cup (3,4)$は開集合である

$[1,2]\cup [3,4]$は閉集合である

$(1,2)\cup [3,4]$は開集合でも閉集合でもない

$\{0\}$(一点集合)は閉集合である

$\mathbb{R}\setminus \{0\}$は開集合である

有限集合$\{0,1,2,3,4\}$は閉集合である

$\mathbb{Z}$(整数全体の集合)は閉集合である

$\mathbb{Q}$(有理数全体の集合)は開集合でも閉集合でもない

 

$n=2$のとき

$\{(x,y)\in\mathbb{R}^2;x^2+y^2\lt 1\}$は開集合である

$\{(x,y)\in\mathbb{R}^2;-1\lt x,y\lt 1\}$は開集合である

$\{(x,y)\in\mathbb{R}^2;x^2+y^2\leq 1\}$は閉集合である

$\{(x,y)\in\mathbb{R}^2;-1\leq x,y\leq 1\}$は閉集合である

$\{(x,y)\in\mathbb{R}^2;1\leq  x^2+y^2\leq 2\}$は閉集合である

$\{(x,y)\in\mathbb{R}^2;1\leq  x^2+y^2\lt 2\}$は開集合でも閉集合でもない

 

一般のとき

$B(x,\varepsilon)=\{y\in\mathbb{R}^n;|y-x|\lt \varepsilon\}$は開集合である

$\emptyset,\mathbb{R}^n$空集合と全体集合は開集合であり、同時に閉集合でもある。

ちなみにユークリッド空間では、開集合かつ閉集合であるような集合は空集合と全体集合以外には存在しない。・・・ということなので、ユークリッド空間じゃない何かしらのなにかに対して開集合や閉集合が定義できて、そのときに空集合でも全体集合でもないのに開かつ閉であるような集合が存在しているかもしれない。

 

性質

区間は開集合

$n=1$において、開区間は開集合である。$(a,b)$

$x\in (a,b)$について、$\varepsilon=\min\{\dfrac{x-a}{2},\dfrac{b-x}{2}\}\gt 0$とすれば$B(x,\varepsilon)\subset (a,b)$

開集合同士の直積

開集合と開集合の直積は開集合である。例えば、$(a,b)\times (c,d)$は開集合である

連続写像から定まる開集合

$f:\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}^m $は連続写像として、$U\in\mathbb{R}^m $を開集合とする。このとき、$f^{-1}(U)\subset \mathbb{R}^n$もまた開集合である。

例えば、$n=2,m=1$として、$f(x,y)=x^2+y^2$,$U=(-\infty,1)$とした場合、$f^{-1}(U)=\{(x,y)\in \mathbb{R}^2;x^2+y^2\lt 1\}$となる。よって$\{(x,y)\in \mathbb{R}^2;x^2+y^2\lt 1\}$は開集合である。

開集合同士の共通部分と和集合

$U_1,U_2\subset\mathbb{R}^n$が開集合であるとき、$U_1\cap U_2,U_2\cup U_2$もまた開集合である。

ここで、気をつけなければいけないのは、$\cup$のほうは無限個の合併を考えてもいいのだけど、$\cap$の場合は有限個の集合の共通部分しか許されていないのである。

例えば、$U_n=(-1/n,1/n)$というような開集合の列があったとき、$\cap_{n=1}^{\infty} U_n=\{0\}$となって開集合ではなくなるのである。

なぜ和集合では大丈夫なのに共通部分ではダメなのだろうか?定義に戻ってみてみる

$x\in U_n $のとき、$B(x,\varepsilon_n)\subset U_n$であるような状況を考える。

このとき、$x\in \cup_{n=1}^{\infty} U_n$を考えたとき、ある$k\in\mathbb{N}$が存在して$x\in U_k$だが、このとき、$B(x,\varepsilon_k)\subset U_k\subset \cup_{n=1}^{\infty} U_n$のようになるため、和集合の場合は問題ないのである。

一方共通部分の場合だとどうなるだろうか。

$x\in U_1\cap U_2$であるとき、$B(x,\varepsilon)\subset U_1\cap U_2$であるような$\varepsilon$をどう取ればいいのかというと、$\varepsilon =\min\{\varepsilon_1,\varepsilon_2\}$である。任意の有限個の場合も同様で、$x\in U_1\cap \cdots \cap U_n$のときも$\varepsilon=\min\{\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_n\}$とすればOKである。

同じようなノリで無限個の集合の共通部分を考えるならば$x\in \cap_{n=1}^{\infty} U_n$ならば$\varepsilon=\inf\{\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_n,\ldots\}$みたいにするというような発想に落ち着くだろう。

で、これの何が問題なのかというと、開集合の定義を満たすためには$\varepsilon\gt 0$であることが要求されるのである。で、実際に有限個の集合の共通部分においては問題ないのだが、無限個の場合は$\varepsilon=0$となってしまう可能性が残されているのである。前述の$U_n=(-1/n,1/n)$においては$\varepsilon_n=\dfrac{1}{2n}$みたいな状況になっているので、実際にinfを取ってしまうと0と等しくなってしまうのである。

 

ところで、開集合なら

$\forall \lambda \in\Lambda $について$A_\lambda $が開集合なら$\cup_{\lambda \in\Lambda} A_\lambda$もまた開集合である

$A_1,\ldots,A_n$が開集合なら、$A_1\cap\cdots \cap A_n$もまた開集合である。

みたいなことが成り立つが、閉集合だと有限無限が逆転する。(ドモルガンの法則を考えればわかる)

つまり、

$\forall \lambda \in\Lambda $について$A_\lambda $が閉集合なら$\cap_{\lambda \in\Lambda} A_\lambda$もまた閉集合である

$A_1,\ldots,A_n$が閉集合なら、$A_1\cup\cdots \cup A_n$もまた閉集合である。

開集合の場合は無限個の共通部分を取るのがNGだったけど、閉集合の場合は無限個の和集合を取るのがNGとなる。

これも$V_n=[0,1-1/n]$について、$\cup_{n=1}^{\infty}V_n=[0,1)$が反例となる。

 

閉集合内での点列

$D$を閉集合とする。このとき、$\{a_n\}_{n=1}^{\infty}$を$D$上の点列とする。$\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha$が存在するならば、$\alpha\in D$である。

 

これはけっこう使う

閉包と内部

開集合か閉集合かわからないような集合$A\subset \mathbb{R}^n$が与えられたとき、

$A$を含む最小の閉集合を$A$の閉包といい、$\overline{A}$と書く

$A$に含まれる最大の開集合を$A$の内部といい、$A^i$と書く

$A^i\subset A\subset \overline{A}$が一般に成り立つ。

$A$の境界は$\overline{A}\setminus A^i $で定義して$\partial A$と書く

 

例・性質

$A$が閉集合であることと$A=\overline{A}$は同値

$A$が開集合であることと$A=A^i$は同値

$(A^i)^i=A^i$

$\overline{\overline{A}}=\overline{A}$

$\overline{(a,b)}=[a,b]$

$\overline{[a,b)}=[a,b]$

$\overline{(a,b]}=[a,b]$

$\overline{[a,b]}=[a,b]$

$(a,b)^i=(a,b)$

$[a,b)^i=(a,b)$

$(a,b]^i=(a,b)$

$[a,b]^i=(a,b)$

$\overline{\mathbb{Q}}=\mathbb{R}$

 

$\{(x,y);x^2+y^2\leq 1\}^i=\{(x,y);x^2+y^2\lt 1\}$

$\overline{\{(x,y);x^2+y^2\lt 1\}}=\{(x,y);x^2+y^2\leq 1\}$

$\partial \{(x,y);x^2+y^2\lt 1\}=\{(x,y);x^2+y^2=1\}$

$\partial \emptyset=\emptyset$

$\partial \mathbb{R}^n=\emptyset$

 

集合位相での話

今までの話ではまずユークリッド空間があって、そこに距離を定めた結果なにが開集合で閉集合であるかを議論していた。

位相空間論では逆になる。つまり、最初になにが開集合でなにが閉集合になるのかを決めて、そこから議論を出発するのである。ユークリッド空間においては開集合が議論の出発点となっていたが、一般の位相空間論では開集合がスタート地点である。

 

位相空間とは$(X,\mathcal{O})$という組で与えられる。で、$X$は一般の集合であり、$\mathcal{O}$の元は$X$の部分集合である。つまり$\mathcal{O}\subset 2^X$である。

 

何が開集合であるかをある程度は好き勝手に決めることができる。ただしなんでも自由というわけではなく、以下の制約がある。

・$U_\lambda \in \mathcal{O},(\forall \lambda \in \Lambda)$ならば、$\cup_{\lambda\in\Lambda} U_\lambda \in \mathcal{O}$

・$U_i\in\mathcal{O}(i=1,\ldots,n)$ならば$\cap_{i=1}^{n} U_i\in\mathcal{O}$

・$\emptyset \in\mathcal{O},X\in\mathcal{O}$

 

つまり、前述で開集合の性質として挙げた「開集合の和集合は開集合」や「有限個の開集合の共通部分は開集合」といったものが、逆に開集合の定義となるのである。

 

そして前述で挙げた他の開集合の性質が定義となる。

 

たとえば、

$f:X\to Y$が連続写像、$U\subset Y$が開集合なら、$f^{-1}(U)\subset X$は開集合というのがあるけど、これは逆に連続写像の定義となる。

位相空間論では連続写像を以下のように定める。

$(X,\mathcal{O}_X),(Y,\mathcal{O}_Y)$を位相空間とする。$f:X\to Y$において、任意の$U\subset Y,U\in\mathcal{O}_Y$において、$f^{-1}(U)$も開集合ならば$f$は連続であるという

 

さらに、「開集合同士の直積は開集合」というのも、逆に「位相空間同士の直積」にどうやって位相構造を定めるかの定義となる。

$(X,\mathcal{O}_X),(Y,\mathcal{O}_Y)$を位相空間とする。このとき、$X\times Y$への位相は以下のように定めるのが一般的である。

$U_x\in\mathcal{O}_X,U_y\in\mathcal{O}_Y$は開集合とする。このとき、$U_x\times U_y\subset X\times Y$は開集合である。

ただし、$U_x\times U_y$で書けるような集合だけを開集合とするのは良くなくて、これらの「開集合と開集合の直積」の和集合や有限回の積集合で書けるようなものを直積空間の開集合と定める。そうしないと位相の要件を満たさなくなるのでそうしている。

このような位相の定め方を積位相という。

ちゃんとした言葉でいうと、$U_x\times U_y,U_x\in\mathcal{O}_X,U_y\in\mathcal{O}_Y$で生成されるような位相が積位相である。

 

また、ユークリッド空間では開集合かつ閉集合であるような集合は空集合と全体集合しか無いというのは、「ユークリッド空間は連結である」というように言い換えることができる。つまり、連結というのは「開集合かつ閉集合であるような集合が空集合と全体集合以外に存在しない」ような位相空間のことを言う。