開集合と閉集合

定義 集合$U\subset \mathbb{R}^n$が開集合であるとは、以下の性質が成り立つことである。 任意の$x\in U$に対して、ある$\varepsilon \gt 0$が存在して、$B(x,\varepsilon)\subset U$である。 ここで、$B(x,\varepsilon)=\{y\in\mathbb{R}^n;|y-x|\lt \vare…

ワイエルシュトラスの多項式近似定理

概要 $f:[0,1]\to\mathbb{R}$を連続関数とする。このとき、$\{f_n\}_{n=1}^{\infty}$という多項式の列が存在して、$f_n$は$f$に一様収束する。 証明 ここでは、具体的に$f_n$を構成することができる。 $$f_n(x)=\sum_{k=0}^{n}{}_{n}C_{k}f\left(\frac{k}{n}…

ダランベールの収束判定法

主張 $\{a_n\}_{n=1}^{\infty}$を実数の数列とする。このとき、 $$\lim_{n\to\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\lt 1$$ ならば、 $$\sum_{n=1}^{\infty}a_n\lt \infty$$ となる。 逆に、 $$\lim_{n\to\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\gt 1$$…

コーシー積(級数の畳み込み)

問題 $\{a_n\}_{n=0}^{\infty},\{b_n\}_{n=0}^{\infty}$は複素数の列として、$$\sum_{n=0}^{\infty}|a_n|\lt \infty,\sum_{n=0}^{\infty}|b_n|\lt \infty$$ を満たすとする。このとき、 $$\sum_{n=0}^{\infty}\sum_{k=0}^{n}a_kb_{n-k}$$ を求めよ。 考察 任…

1+2+3+4+...=-1/12?

はじめに このような式を見たことがあるだろうか? $$1+2+3+4+\cdots=-\frac{1}{12}$$ これを見たとき、普通ならば頭がおかしいのではないか?といった感想を抱くはずである。それもそのはず、だってこの式は間違っているのだから。おかしいと思うのはとても…

五次方程式は解けない?

概要 数学のネタで、「五次方程式は解けない」というものがある。 しかしみたいなのはという解を導き出すことができるため、「という五次方程式は解くことができる」ということで正しくないのである。 なぜ「五次方程式は解けない」みたいなことが言われるの…

多変数関数の極値判定

注意 この記事では、分かりやすさのために一部厳密性を犠牲にしている部分があります。 厳密でない部分が来た場合には脚注等でなぜ厳密でないかを書きます。 定理 という級関数がある。 これがで極値を持つ条件は まずであること としたとき、 ならば極値で…

超数理能力問題~ロピタルの定理を用いて、この極限値を求めて下さい~

注意 ロピタルの定理を用いません 問題 超数理能力問題 ロピタルの定理を用いて、この極限値を求めて下さい $$\lim_{x\to\frac{\pi}{2}}\frac{-4x^2+\sqrt[\frac{\pi}{x}]{16\pi^4}+3e\cos{2x}\sin{2x}-3!\pi x-5\pi\sin{x}}{-2e^{\pi}\cos{(2x+\pi)}+2x^2-3…

収束定理が使えない例-その2

概要 ルベーグの収束定理が適用できない問題の例を紹介し、どうやって解くのかを説明する 問題 $$\lim_{R\to\infty}\int_{0}^{\pi/2}Re^{-R\sin{\theta}}d\theta$$ を求めよ。 考察 という置換をしてみる。するとより、 である。よって $$\lim_{R\to\infty}\…

収束定理が使えない例-その1

概要 ルベーグの収束定理を適用させるためには、任意の自然数nについて一様に可積分関数で上から抑えられなくてはいけない。それができないタイプの問題を紹介する。 問題 以下の極限を求めよ $$\lim_{n\to\infty}\int_{0}^{1}\sqrt{1+n^2x^{2n-2}}dx$$ 収束…

同値関係と同値類

概要 同値関係・同値類についての解説と例を紹介します。 概要 定義 注意点 性質 同値な性質 商写像 位相構造 具体例 三角形と相似 写像 群(剰余群) 環とイデアル(剰余環) ベクトル空間(商線形空間) 商体 ホモトピック ホモトピー同値

実数とは何か

導入 ・実数とは無理数と有理数を合わせたものである ・無理数とは、実数のうち有理数ではないものである*1 と堂々巡りになってしまうようでは良くないので、実数とは何かについて説明していこう。 余談 ところで、高校数学では堂々巡りの定義をしているとい…

無理数の判定法

概要 実数が無理数であることの必要十分条件は 任意のに対して $$0\lt \left|\alpha-\frac{q}{p}\right|\lt \frac{\varepsilon}{p}$$ を満たす有理数が存在することである これについて詳しく解説していこうと思います。 必要性の証明 が有理数であるときに…

ε-δ論法とε-N論法

概要 ε-δ論法,ε-N論法は極限の概念を厳密に定義したものである。 解析学をやる上での基本中の基本である 定義 極限については数列の極限と関数の極限の2種類がある ・数列の極限に対してはε-N論法 ・関数の極限に対してはε-δ論法 で極限が定義される。 数列…

オイラーの公式

概要 オイラーの公式といえば $$e^{ix}=\cos{x}+i\sin{x}$$ という形が有名だが、これがどういうことについて解説する。 最初に これが何をやっているかというと、指数関数を複素数上でも使えるように拡張するとどうなるかについて考えた結果できたものであ…

頭脳王2020の物理

頭脳王2020の物理の問題 (東京からパリまでのにボールを投げる場合の問題) について 仮定では地球が平面としていたが、地球の丸みを考えた場合どうなるかについて考察してみた。

ルベーグ積分の使用例③

概要 ルベーグ積分の使用例として、ある問題を解説しようと思います。 ちなみにこれは自作問題です 問題 をσ加法族としてを上の測度とする。 ここで、を、とする。 (1) が上の測度であることを示せ (2) を可積分関数としたとき、を求めよ

ルベーグ積分の使用例②

概要 ルベーグ積分の使用例として、ある問題を解説していきたいと思います。 問題 を測度空間とする。上の可測関数の列があって、に各点収束する。を満たす実定数について $$A_n=\{x\in X| |f_n(x)|\leq c |f(x)|\}$$ と定めたとき、 $$\lim_{n \to\infty}\i…

正定値行列について

概要 正定値行列について適当に*1解説をします。また、ここで出てくる行列は実数係数です 概要 定義 同値な定義 内積との一対一対応 平方根の存在 行列式 分散共分散行列 定義 n次対称行列が半正定値であるとは任意のに対して $$x^{\top} Ax\geq 0$$ となる…

整数係数の逆行列

問題 をすべての成分が整数の次正方行列とする。このとき次の2つが同値であることを示せ。 行列式が±1である 逆行列が存在して、逆行列のすべての成分が整数である 解答 1⇒2 行列式が0でないので正則。よって逆行列は存在する。 余因子行列を利用する。 次正…

ルベーグ積分の使用例①

概要 ルベーグ積分の使用例として、ある問題について解説しようと思います。 この問題は測度論の演習問題によく出る気がします。 問題 を測度空間として,を非負な可積分関数とする. このとき,測度を新たに $$\nu (A)=\int_A g(x) d\mu(x),(A\in\mathcal{F})$…

代数学の基本定理

???「真実はいつもひとつって言うけど、2次方程式の解は2つあるじゃん」 概要 代数学の基本定理の証明します。ここでは 複素解析を使った証明を2つほど紹介します。 主張 とする。を複素数係数の次多項式とする。つまり $$f(z)=a_nz^n+a_{n-1}z^{n-1}+\cd…

準同型定理(第一同型定理)

代数をやっている人にとっての呼吸器官と言われている準同型定理の解説をしようと思います。 ※ここで説明するのは群についての準同型定理であって、環にとっての準同型定理はまた別にあります。 目次 群の定義 群の例 群の性質 部分群 部分群の例 正規部分群…

最大値最小値の定理

概要 を有界閉区間としたとき、上で定義された連続関数は最大値と最小値をもつ。つまりあるがあって、全てのについて、となる。 証明 最大値の方だけ証明すれば十分である。なぜならについて同じように最大値の存在を証明すればそれはの最小値になるからであ…

無限小数

概要 実数とは何かという問に対して、たいていの人は「無限小数で書ける数」ということを思い浮かべるかもしれないが、残念ながらそれでは不十分であるので無限小数とは何かについて考えなければいけないのである。 また、この記事は10進法(=2×5進法)で書か…

等号は常には成り立たない

概要 受験数学の問題を解いているときにこの記事のタイトルをそっくりそのまま書いた人は少なくはないだろう。積分や不等式が絡む問題でよくこの言葉の使い回しが出てくる。そこで、この記事では「等号は常には成り立たない」という言葉の裏にどのような論理…

Ravi変換

概要 不等式の問題にはたまに、「を三角形の辺の長さとするとき…」という制約条件が出てくる。この制約は面倒くさいものである。何故ならは制約を満たすが、は制約を満たさない。後者の場合はもちろんが長すぎて三角形が作れないからなのだが、三角形が作れ…

地球を貫通する穴を通る物体の運動

はじめに この記事を書くことになったきっかけは先日放送していた頭脳王というテレビ番組である。その中で地球を貫通する穴を通る物体の運動についての問題が出た。このような条件の場合、結論から言うと物体は自由落下せずに単振動をするという興味深い結果…

写像で間違いがちなアレ

注意 この記事では証明をあまり詳しくやっていない。証明を詳しく知りたいという人は他のサイトを当たって欲しい。(ネットでなら大学が公開しているpdfを見るといいだろう) 問題 早速だが問題である。 という写像とという部分集合を持ってきた時、次のうち成…

有限表現可能について

前提 群論についての基本的なこと(群、部分群、準同型など)を知っていればOK ここでは、有限表現可能が"何をしようとしているのか"について説明するのが主な目的であり、その過程で有限生成にも軽く触れようと思っている。 生成とは を群としたとき、を任…