ダランベールの収束判定法
主張
$\{a_n\}_{n=1}^{\infty}$を実数の数列とする。このとき、
$$\lim_{n\to\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\lt 1$$
ならば、
$$\sum_{n=1}^{\infty}a_n\lt \infty$$
となる。
逆に、
$$\lim_{n\to\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\gt 1$$
ならば
$$\sum_{n=1}^{\infty}a_n= \infty$$
となる。
証明
収束性の証明
ε-N論法を使う。
$\lim_{n\to\infty}|a_{n+1}/a_n|=r\lt 1$としたとき、任意の$\varepsilon\gt 0$に対して、ある$N\in\mathbb{N}$が存在して、$n\geq N$のときに
$$r-\varepsilon\leq |a_{n+1}/a_{n}|\leq r+\varepsilon$$
となる。ここで、$\varepsilon\gt 0$は任意にとってもよいため、ここでは$\varepsilon=\frac{1-r}{2}$と定める。
すると、$n\geq N$においては、$|a_{n+1}/a_n|\leq \frac{1+r}{2}\lt 1$となる。
以降は表記を簡単にするため$(1+r)/2=s$と書く。
このとき、
$$\sum_{k=1}^{n}|a_k|=\sum_{k=1}^{N-1}|a_k|+\sum_{k=N}^{n}|a_k|$$
$$\leq \sum_{k=1}^{N-1}|a_k|+\sum_{k=N}^{n}|a_N|s^{k-N}$$
$$=\sum_{k=1}^{N-1}|a_k|+|a_N|(1+s+s^2+\cdots+s^{n-N})$$
$$=\sum_{k=1}^{N-1}|a_k|+|a_N|\frac{1-s^{n-N+1}}{1-s}$$
$$\leq \sum_{k=1}^{N-1}|a_k|+|a_N|\frac{1}{1-s}$$
これは$n$には依存していない。
つまり、$\varepsilon,N$を固定したまま、$n$を無限大にまで飛ばしても、$\sum_{k=1}^{n}|a_k|$は$\sum_{k=1}^{N-1}|a_k|+\frac{|a_N|}{1-s}$($n$について定数!)より大きくならない。よって、有界である。
また、$\sum_{k=1}^{n}|a_k|$は$n$について単調増加である。よって有界で単調増加であるため、収束する。
絶対収束する数列は収束するため、$\sum_{k=1}^{n}a_k$も収束する
収束性に関する別証明
$\sum_{k=1}^{n}a_k$がコーシー列であることを示せばよい。
$\varepsilon\gt 0$を$0\lt \varepsilon\lt \frac{1-r}{2}$の範囲内で任意に取る。このとき、
ある自然数$N$が存在して、$n\geq N$ならば、$|a_{n+1}/a_n|\leq r+\varepsilon$となる。
このとき、$s=\frac{1+r}{2}$とする。
このとき、$n\leq m $を$N$以上の範囲内で自由に取ると、
$n\geq N$ならば$|a_n|\leq |a_N|s^{n-N}$なので、
$$|a_n+\cdots +a_m|\leq |a_n|+\cdots +|a_m|$$
$$\leq |a_N|(s^{n-N}+s^{n-N+1}+\cdots+s^{m-N})$$
$$=\frac{|a_N|}{s^N}s^n(1+s+\cdots +s^{m-n})$$
$$=\frac{|a_N|}{s^N}s^n\frac{1-s^{m-n+1}}{1-s}$$
$$=\frac{|a_N|}{s^N}s^n\frac{1}{1-s}$$
これは、$n\to\infty$で0に収束するためコーシー列であることが従う。
もう少し詳しく説明する。
$N_1$を、$$\frac{|a_N|}{s^N(1-s)}s^{N_1}\lt\varepsilon$$
となるようにとる。これは0に収束する性質から取れることが保証される。
すると、$n,m $を$N_1$より大きく取ると、
$|a_n+\cdots+a_m|\lt \varepsilon$となる。
よって、$\varepsilon$を任意に定めると、$N_1$という自然数が存在して、$n,m\geq N_1$ならば、$|a_n+\cdots+a_m|\lt \infty$となるため、$\sum_{k=1}^{n}a_k$はコーシー列となる。
発散性の証明
$\lim_{n\to\infty}|a_{n+1}/a_n|=r\gt 1$とする。このとき、$\varepsilon=\frac{r-1}{2}\gt 0$として、$s=\frac{1+r}{2}\gt 1$とおく。このとき、ある自然数$N$が存在して$n\geq N$のとき$|a_n|\geq s |a_{n+1}|$となる。
このとき、$n\geq N$のときに$|a_n|\geq |a_N|s^{n-N}$となる。これは$n\to\infty$で飛ばしたときに0に収束しない。よって、$\lim_{n\to\infty}a_n$が0とならないため、この級数は収束せず発散する。
使用例
例1
$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{n!}{n^n}$$
という級数について
$$\lim_{n\to\infty}\frac{(n+1)!}{(n+1)^{n+1}}\frac{n^n}{n!}=\lim_{n\to\infty}(1+1/n)^{-n}=1/e\lt 1$$
となるため、この級数は収束する。
例2
$a$を実数としたとき、
$$\sum_{n=0}^{\infty}\frac{a^n}{n!}$$
という級数は、
$$\lim_{n\to\infty}\frac{a^{n+1}}{(n+1)!}\cdot\frac{n!}{a^n}=\lim_{n\to\infty}\frac{a}{n+1}=0\lt 1$$であるため、収束する。
例3
$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1.000001^n}{n^{10000000}}$$
という級数は、
$$\lim_{n\to\infty}\frac{1.000001^{n+1}}{(n+1)^{10000000}}\frac{n^{10000000}}{1.000001^n}=\lim_{n\to\infty}1.000001\cdot (1+1/n)^{10000000}=1.000001\gt 1$$
であるため、発散する
例4
$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}$$
という級数については、
$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{(n+1)^2}\frac{n^2}{1}=\lim_{n\to\infty}(1+1/n)^{-2}=1$$
であるため、ダランベールの判定法では、収束するか発散するかは分からない。
これについてはダランベールの判定法以外の方法を使うと収束することが示せる。
例5
$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}$$
という級数については、
$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{(n+1)}\frac{n}{1}=\lim_{n\to\infty}(1+1/n)^{-1}=1$$
であるため、ダランベールの判定法では、収束するか発散するかは分からない。
これについてはダランベールの判定法以外の方法を使うと発散することが示せる。
例4,5より、極限が1ぴったりの場合だと、収束する場合も発散する場合もある。
関連記事