最大値最小値の定理

概要

{I=[a,b]}有界区間としたとき、{I}上で定義された連続関数{f:I\to\mathbb{R}}は最大値と最小値をもつ。つまりある{c,d\in I}があって、全ての{x\in I}について、{f(c)\leq f(x)\leq f(d)}となる。

証明

最大値の方だけ証明すれば十分である。なぜなら{-f(x)}について同じように最大値の存在を証明すればそれは{f(x)}の最小値になるからである。

さて、有界区間上で定義されているため、関数自体は有界である。つまりある{M\geq 0}が存在して、{|f(x)|\leq M(\forall x\in I)}となる。つまり実数の部分集合の$$f(I)=\{f(x)|x\in I\}$$が有界であるため上限が存在する。(実数の部分集合で有界ならば上限が存在することは、実数の連続性から導くことができる)

 

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一応上限の定理をさらっておこう。{A\subset \mathbb{R}}について、{a}{A}の上限であるとは、以下の2つを満たすことである。

  • {\forall x\in A}について、{x\leq a}が成立する
  • {\forall \epsilon \gt 0}について、ある{x\in A}が存在して、{a-\epsilon\lt x\leq a}が成立する。

また、{a}{A}の上限であるとき、{a=\sup A}と書くこともある。 

ここで、{\sup A\in A}とは限らないことに注意である、どちらの場合もありえるのである。

よって、{M}{f(I)}の上限であることは以下のように言い換えられる。

{y\in f(I)}であることは、{\exists x \in I,f(x)=y}と同値であることに注意!)

  • {\forall x\in I}について、{f(x)\leq M}
  • {\forall \epsilon \gt 0}について、ある{x\in I}が存在して、{M-\epsilon \lt f(x)\leq M}が成立する。

もし、{c\in I}であって{f(c)=M}となるものが存在した場合、証明として十分であることが分かる({c}が実際に最大値を取る{I}上の値となるため)

実はこのような{c}は存在するので、これを証明しよう。

数列{\{x_n\}_{n=1}^{\infty} \in I}を、{f(x_n)\gt M-\frac{1}{n}}を満たすようにとる。どんな{n}についても、このようにとることができる{x_n}が存在する。上限の定義の2つめに対して、{\epsilon=\frac{1}{n}}を適用すればいいからである。そうすれば条件よりうまい具合に{x_n\in I}が見つかるということになる。*1

ここである程度の察しが付くと「{\{x_n\}}の極限を{c}とすればいいのでは」思いそうになるが、残念ながらもう1ステップ必要である。{\{x_n\}}{f(x_n)\gt M-\frac{1}{n}}を満たしているという性質しか分かっていないため、収束するかどうかは分からない。つまり振動する可能性が残っているということである。ここで、ボルツァーノワイエルシュトラスの定理の使う。

 

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 この定理を使うことで、{\{x_{n_k}\}_{k=1}^{\infty}}という部分列が存在して、{x_{n_k}}{k\to \infty}で収束するようにとることができる。この収束値を{c}とすると、{c\in I}であって{f(c)=M}となるのである。

これを示そう。まず{I}は閉区間であるため閉集合。よって{x_{n_k}}の極限は{I}をはみ出すことはない。よって{c \in I}である。また、{f}の上限の定理と不等式をいろいろすることで、

$$M-\frac{1}{k}\leq M-\frac{1}{n_k}\lt f(x_{n_k})\leq M $$

という不等式が成立する。*2これについて{k\to \infty}ではさみうちの原理を適用すればよい。

ここで、真ん中の極限については{f}が連続関数であることから、

$$ \lim_{k\to\infty}f(x_{n_k})=f(\lim_{k\to \infty}x_{n_k})=f(c)$$

となる。よって、

$$f(c)=M $$

となることがわかった。

 

*1:もし条件を満たす{x_n}の候補が複数あっても、どれを選んでも構わない。どれかひとつだけを選べば良い(ところで、このような選び方が存在することって選択公理を使ってそう(小並感)実際のところはどうなんでしょうかね?詳しい人教えてください)

*2:部分列というものは{1\leq n_1\lt n_2\lt \cdots}となっているため、{n_k\geq k}が言える