超数理能力問題~ロピタルの定理を用いて、この極限値を求めて下さい~
注意
ロピタルの定理を用いません
問題
超数理能力問題
$$\lim_{x\to\frac{\pi}{2}}\frac{-4x^2+\sqrt[\frac{\pi}{x}]{16\pi^4}+3e\cos{2x}\sin{2x}-3!\pi x-5\pi\sin{x}}{-2e^{\pi}\cos{(2x+\pi)}+2x^2-3\cdot 5^{\left(x-\frac{\pi}{2}\right)}-\pi x+3\sin{5x}+2e^{\left(x+\frac{\pi}{2}\right)}}$$
(一般大学生 正解率1%未満)
出典:日本No.1の頭脳王関西大会 7ジャンルの頭脳戦 超数理能力
方針
せっかくなのでこの場で一応言っておく。「ロピタルは入試では使えない」は迷信である。正確には「ロピタルの定理を使うためにはロピタルの定理が適用できる条件をすべて満たしているかを確認する必要がある」といったところだろう。正しく使えさえすれば、使っても問題ない。
しかし、その適用条件がややこしいし面倒くさいため、「使いたくない」というのが正直なところだ。
ということで、ここではロピタルの定理を使わない方法で解いてみることにした。
解答
まずという極限が扱いづらいので変換する。とおけばとなる。
分子については
$$4x^2=4\left(y+\frac{\pi}{2}\right)=(2y+\pi)^2=4y^2+4y\pi+\pi^2$$
$$\sqrt[\frac{\pi}{x}]{16\pi^4}=(16\pi^4)^{\frac{x}{\pi}}=(16\pi^4)^{\frac{y}{\pi}+\frac{1}{2}}=4\pi^2(16\pi^4)^{\frac{y}{\pi}}$$
$$3e\cos{2x}\sin{2x}=3e\cos{(2y+\pi)}\sin{(2y+\pi)}=3e\cos{2y}\sin{2y}=\frac{3e}{2}\sin{4y}$$
$$3!\pi x=6\pi\left(y+\frac{\pi}{2}\right)=6\pi y+3\pi^2$$
$$5\pi\sin{2x}=5\pi\sin{2y+\pi}=-5\pi\sin{2y}$$
分母については
$$-2e^{\pi}\cos{(2x+\pi)}=-2e^{\pi}\cos{(2y+2\pi)}=-2e^{\pi}\cos{2y}$$
$$2x^2=\frac{1}{2}(2y+\pi)^2=2y^2+2y\pi+\frac{1}{2}\pi^2$$
$$3\cdot 5^{\left(x-\frac{\pi}{2}\right)}=3\cdot 5^{y}$$
$$-\pi x=-\pi\left(y+\frac{\pi}{2}\right)=-\pi y-\frac{\pi^2}{2}$$
$$3\sin{5x}=3\sin{\left(5y+\frac{5\pi}{2}\right)}=3\sin{\left(5y+\frac{\pi}{2}\right)}=3\cos{5y}$$
$$2e^{x+\frac{\pi}{2}}=2e^{\pi}e^{y}$$
よって求める極限は
$$\lim_{y\to 0}\frac{-4y^2-4y\pi-\pi^2+4\pi^2(16\pi^4)^{y/\pi}+\frac{3e}{2}\sin{4y}-6\pi y-3\pi^2+5\pi \sin{2y}}{-2e^{\pi}\cos{2y}+2y^2+2y\pi+\frac{1}{2}\pi^2-3\cdot 5^y-\pi y-\frac{\pi^2}{2}+3\cos{5y}+2e^{\pi}e^y}$$
となる。
見やすいように少し変形すると(ここで、$a^x=e^{\log{(a)}x}$を使用している)
$$\lim_{y\to 0}\frac{4\pi^2\left(e^{\frac{4}{\pi}\log{(2\pi)}y}-1\right)-10\pi y+\frac{3e}{2}\sin{4y}+5\pi\sin{2y}-4y^2}{2e^{\pi}(e^y-1)+2e^{\pi}(1-\cos{2y})+\pi y-3(e^{\log{(5)}y}-1)-3(1-\cos{5y})+2y^2}$$
この形なら、$y\to 0$で0/0の不定形になっていることが比較的見えやすくなる。
また変形をしてみる
$$\lim_{y\to 0}\frac{4\pi^2\frac{e^{\frac{4}{\pi}\log{(2\pi)}y}-1}{y}-10\pi+\frac{3e}{2}\frac{\sin{4y}}{y}+5\pi\frac{\sin{2y}}{y}-4y}{2e^{\pi}\frac{e^y-1}{y}+2e^{\pi}\frac{1-\cos{2y}}{y}+\pi-3\frac{e^{\log{(5)}y}-1}{y}-3\frac{1-\cos{5y}}{y}+2y}$$
ここで、以下の極限の式を使う。基本公式なので証明は演習とする(便利な言葉だ)
ここでは実数の定数とする。
- $$\lim_{y\to 0}\frac{e^{ay}-1}{y}=a$$
- $$\lim_{y\to 0}\frac{\sin{ay}}{y}=a$$
- $$\lim_{y\to 0}\frac{1-\cos{ay}}{y}=0$$
$$\lim_{y\to 0}\frac{4\pi^2\frac{e^{\frac{4}{\pi}\log{(2\pi)}y}-1}{y}-10\pi+\frac{3e}{2}\frac{\sin{4y}}{y}+5\pi\frac{\sin{2y}}{y}-4y}{2e^{\pi}\frac{e^y-1}{y}+2e^{\pi}\frac{1-\cos{2y}}{y}+\pi-3\frac{e^{\log{(5)}y}-1}{y}-3\frac{1-\cos{5y}}{y}+2y}$$
$$=\frac{4\pi^2\frac{4}{\pi}\log{(2\pi)}-10\pi+\frac{3e}{2}4+5\pi\cdot 2-4\cdot 0}{2e^{\pi}\cdot 1+2e^{\pi}\cdot 0+\pi-3\log{5}-3\cdot 0+2\cdot 0}$$
$$=\frac{4\pi^2\frac{4}{\pi}\log{(2\pi)}-10\pi+\frac{3e}{2}4+5\pi\cdot 2}{2e^{\pi}+\pi-3\log{5}}$$
$$=\frac{16\pi\log{(2\pi)}-10\pi+6e+10\pi}{2e^{\pi}+\pi-3\log{5}}$$
$$=\frac{16\pi\log{(2\pi)}+6e}{2e^{\pi}+\pi-3\log{5}}$$
ここで、この極限操作が正当化されるためには分母が0でないことが必要である。
$$2e^{\pi}+\pi-3\log{5}>2\cdot 2^3+3-3\cdot 2=16+3-6=13>0$$
分母は正なので問題なし
よって求める答えは
$$\frac{16\pi\log{(2\pi)}+6e}{2e^{\pi}+\pi-3\log{5}}$$
である。
感想
何でも詰め込みまくればいいってもんじゃないぜ…
ただ、あえてロピタルを使わないことで問題の構造が少し見えたような気がした。ロピタルの定理は機械的な処理になりがちなので…
たぶんゴリゴリ微分計算するよりもこの方法が楽なのかもしれない?