次元定理
概要
次元定理とは、線形空間の核と像、次元にまつわる等式である。以下の記事も場合に応じて参照すればいいだろう。
主張
を有限次元ベクトル空間として、を線形写像とする。このとき、次の等式が成立する。
$$\dim \mathrm{Ker}f+\dim \mathrm{Im} f=\dim V$$
証明
とおく。このとき、それぞれの部分空間について基底を取ることができる。
の基底を,の基底をとおく。
このとき、
$$f(x_1)=\cdots=f(x_n)=0$$
が成り立つ。また、各に対して、となるようなが存在する。
目標としては、これらの個のベクトルの組がの基底であることを言いたい。そのためにはこれらのベクトルが一次独立であることと全体を張ることを示す必要がある。
まずは一時独立性から示そう。
$$\sum_{i=1}^{n}a_ix_i+\sum_{j=1}^{m}b_jz_j=0$$
$$\Rightarrow f\left(\sum_{i=1}^{n}a_ix_i+\sum_{j=1}^{m}b_jz_j\right)=0$$
$$\Rightarrow f\left(\sum_{i=1}^{n}a_ix_i\right)+f\left(\sum_{j=1}^{m}b_jz_j\right)=0$$
第一項目の関数の引数はの元であるため第一項は0となる。よって、
$$\Rightarrow f\left(\sum_{j=1}^{m}b_jz_j\right)=0$$
$$\Rightarrow \sum_{j=1}^{m}b_jy_j=0$$
しかしは一次独立であるためでなくてはいけない。さらに、そこからなし崩し的にからが示すことができる。
一次独立が示せたらこれらのベクトルがを張る(=のすべての元が上記の個のベクトルの一次結合で表せる)ことを示そう。
を任意に取る。するとであるため、はの一次結合で表すことができる。その表現を
$$f(v)=c_1y_1+\cdots+c_my_m\ $$
とでもしておこう。ここで、次のベクトルについて考える。
$$w=c_1z_1+\cdots+c_mz_m\ $$
つまりのを に変えたものである。このベクトルについては、
$$f(w)=c_1y_1+\cdots+c_my_m=f(v)$$
である。(注意:ここでとは限らない!)
このとき、であるため、であることがわかる。よってこれらをの一次結合で表すことができる。つまり以下のような式が成り立つの組が存在するということである。
$$v-w=d_1x_1+\cdots+d_nx_n$$
ここまで来たらあとは少しである。に先程求めた式を代入して整理すると、
$$v=\sum_{i=1}^{n}d_ix_i+\sum_{j=1}^{m}c_jz_j$$
となる。よって任意のがの一次結合で表現できることが示された。
これらのベクトルが一次独立であることと合わせて、の次元がであるとわかる。