次元定理

概要

次元定理とは、線形空間の核と像、次元にまつわる等式である。以下の記事も場合に応じて参照すればいいだろう。

shakayami-math.hatenablog.com

 

主張

{V,W}を有限次元ベクトル空間として、{f:V\to W}を線形写像とする。このとき、次の等式が成立する。

$$\dim \mathrm{Ker}f+\dim \mathrm{Im} f=\dim V$$

証明

{\dim \mathrm{Ker}f=n,\dim \mathrm{Im} f=m}とおく。このとき、それぞれの部分空間について基底を取ることができる。

{\mathrm{Ker}f}の基底を{x_1,\ldots,x_n\in V},{\mathrm{Im}f}の基底を{y_1,\ldots,y_m\in W}とおく。

このとき、

$$f(x_1)=\cdots=f(x_n)=0$$

が成り立つ。また、各{i=1,\ldots,m}に対して、{f(z_i)=y_i}となるような{z_i \in V}が存在する。

目標としては、これらの{(n+m)}個のベクトルの組{x_1,\ldots,x_n,z_1,\ldots,z_m}{V}の基底であることを言いたい。そのためにはこれらのベクトルが一次独立であることと{V}全体を張ることを示す必要がある。

まずは一時独立性から示そう。

$$\sum_{i=1}^{n}a_ix_i+\sum_{j=1}^{m}b_jz_j=0$$

$$\Rightarrow f\left(\sum_{i=1}^{n}a_ix_i+\sum_{j=1}^{m}b_jz_j\right)=0$$

$$\Rightarrow f\left(\sum_{i=1}^{n}a_ix_i\right)+f\left(\sum_{j=1}^{m}b_jz_j\right)=0$$

第一項目の関数の引数は{\mathrm{Ker}f}の元であるため第一項は0となる。よって、

$$\Rightarrow f\left(\sum_{j=1}^{m}b_jz_j\right)=0$$

$$\Rightarrow \sum_{j=1}^{m}b_jy_j=0$$

しかし{y_1,\ldots,y_m}は一次独立であるため{b_1=\cdots=b_m=0}でなくてはいけない。さらに、そこからなし崩し的に{a_1x_1+\cdots+a_nx_n=0}から{a_1=\cdots=a_n=0}が示すことができる。

一次独立が示せたらこれらのベクトルが{V}を張る(={V}のすべての元が上記の{n+m}個のベクトルの一次結合で表せる)ことを示そう。

{v\in V}を任意に取る。すると{f(v)\in \mathrm{Im}f}であるため、{f(v)}{y_1,\ldots,y_m}の一次結合で表すことができる。その表現を

$$f(v)=c_1y_1+\cdots+c_my_m\ $$

とでもしておこう。ここで、次のベクトル{w}について考える。

$$w=c_1z_1+\cdots+c_mz_m\ $$

つまり{f(v)}{z_j}{y_j} に変えたものである。このベクトルについては、

$$f(w)=c_1y_1+\cdots+c_my_m=f(v)$$

である。(注意:ここで{v=w}とは限らない!)

このとき、{f(v-w)=0}であるため、{v-w\in\mathrm{Ker}f}であることがわかる。よってこれらを{x_i}の一次結合で表すことができる。つまり以下のような式が成り立つ{d_i}の組が存在するということである。

$$v-w=d_1x_1+\cdots+d_nx_n$$

ここまで来たらあとは少しである。{w}に先程求めた式を代入して整理すると、

$$v=\sum_{i=1}^{n}d_ix_i+\sum_{j=1}^{m}c_jz_j$$

となる。よって任意の{v\in V}{\{x_i\}\cup\{z_j\}}の一次結合で表現できることが示された。

これらのベクトルが一次独立であることと合わせて、{V}の次元が{n+m}であるとわかる。