整数係数の逆行列
問題
をすべての成分が整数の次正方行列とする。このとき次の2つが同値であることを示せ。
解答
1⇒2
余因子行列を利用する。
次正方行列を以下のように定める。
- 成分を「から行目と行目を取り除いてできた次正方行列」の行列式とする
このとき、となる。ただしは単位行列である。
よって$$A^{-1}=\frac{1}{\det{A}}B$$
となるが、の各成分は 成分が整数の行列の行列式 であるため整数である。
仮定よりであるため、成分をで割っても行列の成分はすべて整数のままである。
よってのすべての成分は整数となる。
2⇒1
の逆行列をとおく。
このとき、成分が整数であることからは整数である。
行列式は積について保存するので
$$\det{A}\cdot \det{A^{-1}}=1$$
より、
$$\det{A^{-1}}=\frac{1}{\det{A}}$$
が整数でならなくてはいけない。これを実現するためにはであることが必要である。
補足
$$\mathrm{GL}_n(\mathbb{Z})=\left\{A\in M_n(\mathbb{Z})|\det{A}=\pm 1\right\}$$
$$\mathrm{SL}_n(\mathbb{Z})=\left\{A\in M_n(\mathbb{Z})|\det{A}=1\right\}$$
というものがあって、(これらをモジュラー群という)これらの集合が(行列の積に対して)群の構造をなしている。*1
これが今回示した定理とどのように関連しているかというと、の逆元の存在性そのものである。
ちなみにSLの方については行列式の積の保存性によってならばしかありえないのでこれについても逆元がの中にきちんと存在していることが言える。
*1:は成分がKの元によって構成されているn次正方行列全体の集合である。