次元が同じなら同型
概要
ベクトル空間が同型であるとは、線形写像であってかつ全単射写像であるもの(=同型写像)が存在することをいう。群の場合は位数が同じでも同型とは限らないが、*1ベクトル空間の場合では話はもっと単純になり、次元が同じであることが同型であることの必要十分条件となる。
必要に応じて以下の記事も参照してほしい。
次元が同じなら同型
を有限次元ベクトル空間として、とする。このとき、という全単射写像が存在することを証明しよう。
まず、それぞれに対して基底が存在する。その基底のうちの1つを
$$v_1,\ldots,v_n \in V$$
とおく。これを固定する。ここから同型写像を作る。
任意のについて、となるようなの組み合わせがただ一つだけ存在する。
存在性は基底の定義により、の任意の元がの一次結合で表すことができることからわかる。
一意性についてはの一次独立性からわかる。例えばに対して二種類以上の線形結合の表し方が存在すると仮定すると、
$$v=a_1v_1+\cdots+a_nv_n$$
$$v=b_1v_1+\cdots+b_nv_n$$
となるが、ここで2つの式を引くと
$$0=(a_1-b_1)v_1+\cdots+(a_n-b_n)v_n$$
となるが、は一次独立であるために、
$$(a_1-b_1)=\cdots=(a_n-b_n)=0$$
でなくてはいけない。よってなるため、上記の二種類の表現は一致している。
よって任意のに対して、それに対応するがただ一つだけ存在しているため、という写像を作ることができる。これが問題の条件を満たしていることを証明する。
まずはこれが全単射であることを示そう。全射性についてはに対してとすればとなるため任意のに対してとなるようなが存在するため従う。単射性についても、が,となる場合、を仮定すると、であるため、より、より、となるから従う。
次にこれが線形写像であることを示す。これは簡単で適当なの元と、適当な実数を持ってくる。すると、
$$f(v)=(a_1,\ldots,a_n)$$
$$f(w)=(b_1,\ldots,b_n)$$
となった場合、
$$v=a_1v_1+\cdots+a_nv_n$$
$$w=b_1v_1+\cdots+b_nv_n$$
となるが、
$$sv+tw=s(a_1v_1+\cdots+a_nv_n)+t(b_1v_1+\cdots+b_nv_n)$$
$$sv+tw=(sa_1+tb_1)v_1+\cdots+(sa_n+tb_n)v_n$$
よって、
$$f(sv+tw)=(sa_1+tb_1,\ldots,sa_n+tb_n)$$
より、
$$f(sv+tw)=sf(v)+tf(w)$$
であることから従う。
に限る必要はなく、例えばという有限次元ベクトル空間でとなるようなものが存在した場合、上記の議論から同型写像
$$f:V\to\mathbb{R}^n,g:W\to\mathbb{R}^n$$
が存在する。写像は全単射であるから、逆写像を作ることができる。よって、
$$f\circ g^{-1}:V\to W$$
という写像が作れるが、これは線型写像どうしの合成であるため線形写像であり、かつ全単射写像同士の合成であるため全単射でもある。よってこれがの間における同型写像となるため、との次元が同じであるならば同型であることが示された。
同型ならば次元が同じ
実は「次元が同じならば同型」というのは逆も成り立つ。これも証明しよう。
をベクトル空間として、を同型写像とした場合、が成立する。
はの単射性から成立して、はの全射性から成立する。ここで、次元定理を持ち出してみよう。次元定理については以下の記事を参照してみるといいかもしれない。
という線形写像について次元定理を適用させると、
$$\dim V=\dim\mathrm{Ker}f+\dim\mathrm{Im}f$$
である。ここで、であることから、
$$\dim V=\dim\{0\}+\dim W$$
であり、であるため、
$$\dim V=\dim W$$
が成立する。
*1:例えばとしたとき、だがとは同型ではない。現にには位数4の元が存在するが、にはそれがない。